Snow Doll ~離れていても君を~
「大丈夫、海里君はリュウシンに信用されてるから」
「そういう問題?」
「ヘッドの女に手を出す奴はいない」
「ヘッド?」
「うん。俺達のリーダー」
なんだか、悪そうな響き……。
よくよく観察してみると、春馬君の耳にはシルバーのピアスがいくつか刺さっていたりして。中指にごつい指輪もしていた。
やっぱり、可愛い春馬君も、あの怖そうな人達の仲間なんだね……。
「じゃあ、俺は帰るよ。二人とも、仲良くね。時々、抜き打ちで様子見に行くから」
私へ軽く手を振った春馬君は、やまない雪の向こうへ姿を消した。
自動ドアの前で待っていてくれた海里君が、私を一瞥してまた歩き出す。
「ま、待って、佐々木君」
エレベーターに体を滑り込ませた彼を追うと、また冷ややかな視線をぶつけられた。
「海里でいい。紛らわしいから」
「……えと、海里君」
「“君”は要らない」
狭いエレベーターの中で鋭く睨まれて、びくっと肩を強張らせる。