Snow Doll ~離れていても君を~
「ここが優希奈ちゃんの家? まさか海里と同居?」
「そう……、一応」
小野寺君に言ったら駄目だったのかな。
「ケイも時々来て泊まっていくから、大丈夫なの」
「そっか、ケイちゃんね。でも、海里の本気で好きな女って、やっぱり……」
「え?」
「あっ、いや。何でもない。クラスの皆には秘密にしとくからさ。心配しないで」
「ほんと? ありがとう」
学年中に広められたらどうしようかと思った。
「てことは、その食材、海里のため?」
「そう。海里、大根のお味噌汁が好きで」
「うわ、あいつのために作ってるんだ。奥さんじゃん」
「え……!?」
「真っ赤になってる。可愛い」
悪戯っ子のように笑った小野寺君は、マンションの入口へ繋がる階段の一番上にあがると、そこに腰かけて手招きをした。
隣に遠慮がちに座ると、小野寺君はビルの隙間から漏れる夕陽を見ながら話し始める。
「最近、海里、表情が柔らかくなったんだよな。前はもっとピリピリしてた」
「そうなの……?」
ところどころケンカと思われる傷痕の目立つ小野寺君の横顔は、いつもの明るい表情と違ってどこか切なそうだった。