Snow Doll ~離れていても君を~
Ⅷ 椿の姫─次に賭けるのは…
「ねえ、昨日って私、ソファで寝ちゃった?」
朝になり、ダイニングテーブルで珈琲を飲む海里に問いかける。
すると彼は不自然に目をそらしてきたので、何かあったのかと、かなり焦って身を乗り出した。
「え……? 私、何かした?」
「覚えてないのか?」
逆に不思議そうに訊かれ、眉を寄せて思い返す。
朝起きると、当たり前のようにベッドの中だった。
ソファでうとうとして、そのあとどうやって自分の部屋に戻ったのだろう。
覚えているのは、夢の中の幸せな出来事だけ。
「海里って、夢の中では優しいね」
「……っ!?」
飲んでいた珈琲がむせたのか、激しく咳き込み始めた。
「大丈夫?」
背中をさすってあげると、びくりと海里の体が揺れた。
「あのね。夢の中で海里、私をお姫さま抱っこして運んでくれたり、布団を肩までかけてくれたり、頭を撫でてくれたり、とにかく優しかったの」
「…………」
私が追加するたびに、徐々に赤みが増していく海里の頬。
さすがに手の甲にキスされたことは、たとえ夢の中とはいえ、恥ずかしくて明かせなかったけれど。