Snow Doll ~離れていても君を~
「さ、誘うって、何を?」
想いを見透かされたのかと、声が上擦って、さらには目が泳いでしまう。
「昨日のアレじゃ、足りなかったのかと思って」
「アレって……?」
ソファで抱きしめてきたことだろうか。
何を思ったのか、海里は優雅な仕草で私の右手を取った。
そして、私の目を見たまま、指の先──爪の部分にそっとキスをした。
「…………っ」
微かに冷たくて柔らかい、唇の感触。
彼の瞳の奥が、何かで揺らめいて見える。
どうしよう……。
もう、体中が沸騰して倒れてしまいそう。
昨日見た、手の甲にキスされた夢は現実だったの……?
海里は無言で私の手を引き玄関へ向かう。
手を繋いで歩くなんて、まるで恋人同士みたいだ。
二人きりの狭いエレベーターの中、どんな顔をしていいのかわからない。
海里はいつものクールな表情なのに、私だけが真っ赤になってうつむいて……。
もしかしたら私の気持ちに気づいていて、ご褒美的な感覚でスキンシップをしてくれているの?
彼にとってはゲーム……遊びなのかな。
マンションを出るまで、彼はずっと私の手を離さなかった。