Snow Doll ~離れていても君を~

「ごめんなさい……。邪魔しちゃったよね」


彼と目が合い、急に後悔の念に襲われた。

海里だって、もっと椿の姫と話をしてみたかったかもしれないのに。なんて自分勝手なことをしてしまったのか。


「何? 俺がいなくなったら寂しいとか?」


海里は薄く笑い、からかいの口調で訊く。

微かだけど笑ってくれたので、怒ってはいないのかと安堵する。


だけど。海里のことが好きだから引き止めた、という本音は……まだ勇気がなくて言えない。

もし彼が妹のようにしか思っていないのだとしたら。
気まずくて、これからは彼のそばにいられなくなるから。


「そりゃあ、寂しいよ。海里がいなくなったら……」


遠まわしな言葉が唇から溢れてくる。

私にとっては、それだけでも勇気のいることだった。


海里は私のすぐそばまで近寄り、低く優しい声で告げた。


「俺は、桜花を離れるつもりはない」

「……如月先輩の命令だから?」

「命令だからというのもあるけど、それだけじゃない」


じゃあ、どうして?

瞳で問うと、海里はいつもと違う柔らかな表情で見下ろしてきた。
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