Snow Doll ~離れていても君を~
「桜花には大切なものが多すぎる」
大切なもの……。
それは当然、如月先輩や、理希達のこと。
その中に私も入っていたらいいのにと、ぼんやりと願ってしまう。
「──そろそろ帰るぞ」
如月先輩の声がかかり、私は海里から一歩下がる。
先輩は、用のなくなった私にはもう、目線すらくれなかった。
最初から……、風紀委員で一緒に活動していた頃から、先輩は私を利用するつもりで優しくしてくれただけだった。
私のことを大切に扱ってくれたのは、いつか本命の椿の姫を手に入れるため。
『俺のそばでただ座っていればいい。
──人形のようにね』
始めに告げられた言葉のとおりだったんだ。
「海里。少し話がある」
如月先輩は皆から離れ、海里と二人で何か深刻な話を始めた。
「優希奈さん、ちゃんと海里君のこと守れた?」
春馬君が楽しそうに目を細めながら近づいてくる。
「うん……。“桜花を離れるつもりはない”って、断ってくれたから、たぶん大丈夫だと思う」