Snow Doll ~離れていても君を~
ゆっくりと歩いているうちに、雪が止んできて、霞んでいたイルミネーションがはっきり瞳に映るようになった。


ふと立ち止まった海里は私のことをじっと見つめてきた。

「頭、雪まみれになってる」

微かに笑った海里は、私の髪に積もっていた雪を払ってくれる。

「……ありがとう。ホワイトクリスマスなのに、もう雪、止んじゃったね」


伝えるなら今しかない。
そう思うのに、

『海里と結ばれる可能性はないからな』
『“彼女”は必要ない』

不吉な言葉ばかりを思い出し、気持ちを伝える勇気が消えかかる。


重たい口を開こうとしたそのとき。

「あんたって。誰のことが一番好きなの? 全然、わからない」

「え……?」


青い光を映し揺らめく海里の瞳が、切なげに私の瞳を貫く。


「理希と話しているときはすごく楽しそうにしてるし。慶蔵には心を許しきってるし」

「ケイは……友達だから」

「年下の春馬に翻弄されて、全然嫌そうじゃなかったし。むしろ可愛がってたよな」

「それは、弟みたいだと思って……」

「あんたの兄には『絶対、優希奈は譲らない。触れさせない』とか言われるし」

「…………」

「それなのにあんたは、俺と一緒にいられるだけで充分とか、思わせぶりなこと言ってきたりして。全然、理解できない」


口を挟む隙がなくなるほど一息に告げられ、初めて彼の気持ちを知る。
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