Snow Doll ~離れていても君を~
海里がこんな風に感じていたなんて知らなかった。
言われてみれば、私は誰にでも良い顔をしている嫌な女だ。
「……最低だね、私。好きな人のこと、知らないうちに傷つけてた」
その言葉に、海里が小さく息を呑む。
私は一つ深呼吸をして、真っ直ぐに海里の瞳を見つめ返した。
「一番大切で、大好きな人、すぐそばにいるのに……。どうやったら信じてくれるの?」
誤解されたままは嫌だった。
勇気を出して紡いだ言葉に、心臓が壊れそうなほど騒ぎ出す。
緊張しすぎたせいか目尻には涙が現れ、溢れそうになってくる。
零れないように必死になって涙を抑えていると、海里の冷えた手が私の頬へ伸ばされた。
「女は自分の弱みになるから、必要ないって思ってたのにな」
瞼を伏せた海里は、掠れた声でつぶやく。
「……でも。もう、耐えられないんだ。あんたが他の男に笑いかけたり、触れられたりしているのを見るのは」
一歩、私のそばに寄った彼は、整った顔をそっと傾ける。
白い息が重なり、冷たく……柔らかなものが私の唇に触れた。