Snow Doll ~離れていても君を~
連れて来られたのは、昨日も入った映画同好会の部屋。
今日は誰の姿もなくて、シンと静まり返っている。
中央と左右に3つ、薄型のTVが掛けられていて、机と椅子は両脇に片づけられていた。
如月先輩はそばにあった机に鞄を置き、眼鏡を外す。それも机の上に置いてから、窓際の黒いソファに座った。
「こっちに来いよ──優希奈」
悠然と背もたれの部分に片腕をを乗せて、私の名前を呼び捨てる如月先輩。
この部屋に入ると、なぜか先輩は変わる──それとも、眼鏡を外したから?
私はゾクリとしながらも、恐る恐る彼の方へ歩み寄る。
彼の瞳に捕らわれたときから、私には拒否権はない気がした。
遠慮がちに彼の隣へ浅く腰掛けると、先輩は後ろの窓を開け、煙草を吸い始めた。
先生に見つかることを恐れた私は、自分のことのように焦ってドアの方を確認してしまう。
私の知っている真面目な先輩とは、あまりにもかけ離れている。
「そういえば聞いていなかったが。優希奈は他に好きな男とか、付き合ってる男はいないんだよな」
「……はい」
「ならいい。──男と付き合ったことくらいあるんだろ?」
「えっと……」
私は正直に答えられずにうつむく。