Snow Doll ~離れていても君を~
「なんだ、まさか付き合ったことないのか? ……まあ、分かる気がするけどな」
顔を覗き込んできた先輩は、僅かに目を細めた。
「先輩は……、どうして私を?」
鋭い眼を見れずに、三年生であることを示す青緑のネクタイの辺りを見つめながら私は尋ねる。
「どうしてって、そんなの決まってるだろう。
──優希奈のことが好きだからだよ」
私の耳元に整った顔を近づけ、囁いた。
低く甘い声が鼓膜を震わせる。
どう返していいのか分からず、困惑した私はさらに下を向いてしまう。
「思った以上に可愛い反応してくれるな」
クッと唇の端を歪めて先輩は嗤い、私はからかわれたのだと気づいた。
そして──気が緩んだところに、窓枠に置かれた灰皿へ煙草を捨てた先輩が、私の体をソファの上に静かに押し倒した……。
じっと見下ろしてくる先輩と見つめ合い、私は何が起きたか分からず、抵抗することを忘れていた。