Snow Doll ~離れていても君を~
「か、薫」
やっぱり呼び捨ては言い慣れないので変な感じがする。
それでも兄は嬉しそうに唇を緩めた。
「合格。でも、まだおろさないよ。傷が他にもあるかもしれない。調べさせて」
彼の指が私の顔にかかった髪を耳にかけ、こめかみや頬にキスをしていく。
「お兄ちゃん……! そこは怪我してないから!」
「え?」
「昔から変わらないよね、お兄ちゃんは」
「……“お兄ちゃん”も捨てがたいな」
膨れ面の私にはかまわず、兄はボソリとつぶやいた。
それからしばらく、私は彼の膝の上で甘やかされていた。