Snow Doll ~離れていても君を~
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日が沈みかけた頃。そろそろ迎えが来るからと兄に促され、蒼生高を出て新しい家に帰ることになった。
ブーツを履き昇降口を出たとき、後ろから声をかけられる。
「蒼生のお姫様。階段から落ちたと聞きましたが、たいして怪我はないようですね」
皮肉たっぷりの表情で私達に近づいてきたのは、この高校ではあまり目立たない灰色の髪の男──影島だった。
まるで、大怪我をして欲しかったみたいな言い草だ。
「さっきのは、思っていたとおり影島の差し金だったか」
普段は穏やかな兄の瞳に、憎しみに近い怒りの感情が灯る。
「まさか。俺の部下が間違って接触しただけかと。大切なお姫様を危険な目に合わせたこと、お詫びします」
どこか芝居がかった口調で影島は唇の端を上げ、お辞儀をしてみせる。
「何の目的があって優希奈を狙っている? 椿の姫を取り返すためなら傷つける必要はないだろう」