Snow Doll ~離れていても君を~
冬里さんと別れ、急に寂しさを覚えた私はぽつりとつぶやく。
「もう少し話していたかったな」
「優希奈、ああいうタイプが好きなの?」
「そっ、そういうわけじゃないけど」
じっとりとした視線を避けるため、話題を変える。
「大きな家だね……」
「中古だけどね。今日から、ここが優希奈の帰る場所だよ」
兄が玄関ドアの黒いスイッチを押すと、鍵の解錠される音がした。自然に照明がつき、私達を出迎えてくれる。
「わ。大理石の床? 玄関がすでに広い」
兄のあとについていき、部屋を一つずつ案内してもらった私はいちいち歓声をあげていた。
本当は海里のマンションに帰りたいのを押し殺して……。
海里のマンションに置いてきた私の荷物は、私の借りていた部屋の持ち主である冬里さんがわざわざ車で運んでくれたらしく。すでに新しい部屋に揃っていた。
自分の部屋に入り、コートをクローゼットに仕舞っていたら、開け放たれたドアの向こうに兄が立っていた。
「優希奈。ちょっと話があるんだけど」
「……え? 何?」
私は兄の部屋に呼ばれ、そっと足を踏み入れる。