Snow Doll ~離れていても君を~
引っ越して間もないからか、兄の部屋はベッドと勉強机があるだけのかなりシンプルなものだった。
そういえば、海里の部屋には入ったことがなかったなと思い出す。
白いセミダブルのベッドをソファ代わりにして、兄の隣に私も腰を下ろした。
彼の肩に触れそうになったので、少しだけ距離を開けて座り直す。
ブレザーを脱ぎ白いシャツになっていた彼の横顔は、憂いを帯びていた。シャツの袖についたボタンを外し、腕をまくる仕草は色気がにじみ出ている。
「お兄ちゃん。早く彼女作ればいいのに」
中学のときから一度も家に連れてきたことがないので、見てみたいというのが私の密かな願望だった。
兄のことだから、椿の姫級の美女を連れてきそう。
「……時々、残酷なことを言うね、優希奈は」
兄は寂しそうな目をして私の髪を一房つかまえた。
「どうして彼女がいないのか、わかってないの?
それとも、わからないフリをしてる?」
それって……。
私は頭を回転させ、考え込む。
「お兄ちゃんってもしかして。ケイみたいに男の人が好きなの? だから男子高!?」
私の叫びに、兄は軽く呆れた顔で溜め息をついた。