Snow Doll ~離れていても君を~
「こんなに好きなのに受け取ってもらえない、か……」
兄の唇に自嘲めいた笑みが浮かぶ。
「好き、って……?」
もちろん、妹としてだよね?
「誰にでも、そうしてるわけじゃないんだよ。優希奈にだけだから」
ベッドの縁に置いた私の手に、いつの間にか兄のひんやりとした手が重なっていた。
「好きだよ、優希奈。妹としてでなく」
どこか哀しそうな目をした兄は、じっと私のことを見つめる。
妹として、じゃなく……。
兄の言葉を反芻し、息が止まりそうになった。
兄は、兄でしかない。
たとえ、血が繋がっていなくても。
実の母が亡くなったとき、ずっとそばにいて慰めてくれたのは兄だった。
たぶん兄がいなかったら、ここまで立ち直れてはいないはずだ。
「ごめんね、薫兄さん。お兄ちゃんとしては大好きなの。
だけど……私、好きな人ができたんだ」
「……桜花にいる男のこと?」
私は小さくうなずく。
「もっと早く、この想いを捨てておくべきだったな。そうすれば優希奈は、こんなに辛い目には合わなかった」
「……どういうこと?」
不審に思い聞き返すと、兄は私から目をそらした。
「優希奈の火傷は、俺のせいだったから」