Snow Doll ~離れていても君を~
「薫兄さんのせい……?」
あの人につけられた肩の火傷が兄のせいだということは、全く結びつかなかった。
「父さんから全部聞いたんだ。あの人と父の間にあったこと」
兄はゆっくりと話し始めた。
「優希奈のお母さん──夏奈さんが亡くなったあと。傷心していた父は目が曇っていたのか、上司にすすめられたあの人とすぐに再婚し、でも父は夏奈さんを忘れられず……それをあの人に勘づかれた。そして夏奈さんの娘の優希奈に辛く当たるようになっていった……」
あの人は、私に意地悪をよくしていたけど、父には隠していたし、一切認めなかった。
「妻の嘘を見抜けず、本当に済まなかった、と父は言っていたよ」
お父さんが私の本当の母のことを忘れられていなかったなんて……。
あの人と再婚した時点で、もう忘れていたのだと思っていた。
「だけど、あの人に俺が優希奈のことを好きだと気づかれてから、さらに不安定になっていったらしい。ある日突然、俺のことを好きだと言ってきて」
「え……?」
あの人が、兄を……?