Snow Doll ~離れていても君を~
「今までごめん。もう独りにはしないから」
肩口に顔を寄せた兄は、服の上から火傷の痕のある部分へ口づけた。
その傷痕が醜いものではないと認められた気がして。
私は兄のシャツにしがみついた。
涙が白いシャツに染みを作っていき、彼の服からは石鹸のような落ち着く香りが漂ってくる。
ぎゅっと抱きつくと、兄は呆れ混じりの溜め息をついた。
「優希奈。理性って言葉知ってる?」
「りせい……?」
「俺に理性がほんの少ししかなかったら……今頃、優希奈はどうなっていたかわかる?」
体を離した兄に下唇を指先でなぞられ、私は目を丸くする。
「警戒心、なさすぎじゃない? 軽々しく男の部屋に入ったら駄目だよ、優希奈」
「だって、お兄ちゃんだから大丈夫でしょ」
何年も一緒に住んでいて、今まで何もなかったのだから。