Snow Doll ~離れていても君を~
「大事すぎて……、いとしすぎて、穢せないだけなんだよ」
髪を優しく撫でたあと、兄は再度、中指の辺りで私の唇にそっと触れた。
「ここにキスしてもいい?」
「ダメです」
「だよね」
兄はきっぱりと断られたにも関わらず、予測していたのか残念そうなそぶりはなく。
私を残して部屋を出て行こうとして、急に立ち止まり振り返った。
「シャワー、一緒にする?」
「……しませんっ」
「え、節電になるよ?」
「もう……! お兄ちゃん、そのセリフ何回目? 昔からそうやってセクハラ発言ばっかりなんだから」
たぶん、重たい空気を変えようとしてくれたのたと思う。
さっきまでの切なく苦しい表情はどこへやら、兄は楽しそうに笑って部屋をあとにした。