Snow Doll ~離れていても君を~
*
翌朝。
兄の部屋から誰かと電話をする声が聞こえてきた。
ドアがわずかに開き、窓辺に立つ兄はこちらへ背を向けている。
私は息をひそめ、途切れ途切れに聞こえる兄の声を拾った。
「……仕方ないな。俺も参加すればいいんだろ? ただし、受験も近いし、これが最後だからな」
何の話だろう。また賭け事が始まるのだろうか。
「で、桜花に襲撃を仕掛けるのはいつだって?」
襲撃……?
「明日? 明日は無理だ。
明後日だな。椿の姫が桜花にいるときを狙って……か。
ああ、わかってる。次に賭けるのは、もちろん──」
私は嫌な予感がして後ずさり、こっそりと部屋へ戻った。
ベッドに座り、理希からもらったぬいぐるみを抱きしめる。
「帰りたい……桜花に」
兄のいるこの家にいれば安心だったが、それ以上に海里たちの元へ帰りたかった。
だけど私の居場所はもう、桜花にはない。
如月先輩は椿の姫が手に入り、喜んでいるのだろうけれど。
そこへ蒼生高が襲撃を仕掛けたら、海里達は不意をつかれて殲滅してしまうかもしれない。
ふと、春馬君からもらったレターセットが目につき、私はペンを取り出した。
翌朝。
兄の部屋から誰かと電話をする声が聞こえてきた。
ドアがわずかに開き、窓辺に立つ兄はこちらへ背を向けている。
私は息をひそめ、途切れ途切れに聞こえる兄の声を拾った。
「……仕方ないな。俺も参加すればいいんだろ? ただし、受験も近いし、これが最後だからな」
何の話だろう。また賭け事が始まるのだろうか。
「で、桜花に襲撃を仕掛けるのはいつだって?」
襲撃……?
「明日? 明日は無理だ。
明後日だな。椿の姫が桜花にいるときを狙って……か。
ああ、わかってる。次に賭けるのは、もちろん──」
私は嫌な予感がして後ずさり、こっそりと部屋へ戻った。
ベッドに座り、理希からもらったぬいぐるみを抱きしめる。
「帰りたい……桜花に」
兄のいるこの家にいれば安心だったが、それ以上に海里たちの元へ帰りたかった。
だけど私の居場所はもう、桜花にはない。
如月先輩は椿の姫が手に入り、喜んでいるのだろうけれど。
そこへ蒼生高が襲撃を仕掛けたら、海里達は不意をつかれて殲滅してしまうかもしれない。
ふと、春馬君からもらったレターセットが目につき、私はペンを取り出した。