Snow Doll ~離れていても君を~


翌朝。

兄の部屋から誰かと電話をする声が聞こえてきた。

ドアがわずかに開き、窓辺に立つ兄はこちらへ背を向けている。

私は息をひそめ、途切れ途切れに聞こえる兄の声を拾った。


「……仕方ないな。俺も参加すればいいんだろ? ただし、受験も近いし、これが最後だからな」


何の話だろう。また賭け事が始まるのだろうか。


「で、桜花に襲撃を仕掛けるのはいつだって?」


襲撃……?


「明日? 明日は無理だ。
明後日だな。椿の姫が桜花にいるときを狙って……か。
ああ、わかってる。次に賭けるのは、もちろん──」


私は嫌な予感がして後ずさり、こっそりと部屋へ戻った。


ベッドに座り、理希からもらったぬいぐるみを抱きしめる。


「帰りたい……桜花に」


兄のいるこの家にいれば安心だったが、それ以上に海里たちの元へ帰りたかった。


だけど私の居場所はもう、桜花にはない。


如月先輩は椿の姫が手に入り、喜んでいるのだろうけれど。

そこへ蒼生高が襲撃を仕掛けたら、海里達は不意をつかれて殲滅してしまうかもしれない。


ふと、春馬君からもらったレターセットが目につき、私はペンを取り出した。


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