Snow Doll ~離れていても君を~
***


「何? このどんよりした暗さ。もしかしてみんな、優希奈さんロス?」


映画鑑賞同好会の扉を開けた途端、春馬が呆れ顔で部屋の隅々を見渡す。

冬休みに入っていたが、同好会には皆顔を出していた。


「しかも、この一角だけ、なんでこんなに暗いの」


肩をすくめた春馬は、理希やケイがいる机へ視線を投げた。


「いやー、そりゃあ優希奈ちゃんロスにもなるでしょ。
……ケイちゃんは、号泣しすぎだけど」


机に突っ伏した格好の理希が苦笑いをする。


「一体、どっちの件で泣いてるの? 龍臣が椿の姫にご執心なこと?」


ケイに近寄った春馬が首を傾げて訊く。


「龍臣はいいの、最初からわかってたことだから」

「え。もう龍臣のことあきらめたんだ?」

「だって、ユキが居ないのが寂しすぎる……」


目元にハンカチを当て、しくしく泣き続けるケイ。


「まあ、気持ちはわからないでもないけどさー」

「私達の可愛いユキが……あんな猛獣達の檻の中に……」


とうとう顔を両手で押さえて、妄想の世界へ入り込んでしまった。
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