Snow Doll ~離れていても君を~
ⅩⅡ 裏切りのチェックメイト─離れていても
*
今日は朝から曇り。
今にも雪の粒が落ちてきそうな灰色の雲だった。
「今日は何の日か、わかるよね」
黒いスーツを着た兄が、笑顔もなく私の部屋の前に立っていた。
「うん……」
「母さん──夏奈さんの命日だ」
母の命日である今日は、兄と父と一緒にお墓参りへ行くことになっていた。
私は黒いワンピースを身に纏い、迎えに来た父の車に乗り込んだ。
「優希奈。今まで辛い思いをさせたな。本当に、悪かった」
「……いいの。私こそ、今まで家族でいてくれて、ありがとう」
母が亡くなってからも、父は血の繋がらない私を本当の娘のように育ててくれている。
だから、感謝しかない。
見晴らしの良い霊園の入口から、そう遠くない位置に母の眠る墓があり、雪はあまり深くなかったため入ることができた。
けれど墓石の前には先客がいて、その手前で私達は立ち止まる。
どこかで見覚えのある──誰かによく似た男性が花を手向けていた。
40歳になる父と同じか、少し下くらいの年齢だろうか。
ライダースジャケットを着て、赤みの強い茶色の髪をしている。
今日は朝から曇り。
今にも雪の粒が落ちてきそうな灰色の雲だった。
「今日は何の日か、わかるよね」
黒いスーツを着た兄が、笑顔もなく私の部屋の前に立っていた。
「うん……」
「母さん──夏奈さんの命日だ」
母の命日である今日は、兄と父と一緒にお墓参りへ行くことになっていた。
私は黒いワンピースを身に纏い、迎えに来た父の車に乗り込んだ。
「優希奈。今まで辛い思いをさせたな。本当に、悪かった」
「……いいの。私こそ、今まで家族でいてくれて、ありがとう」
母が亡くなってからも、父は血の繋がらない私を本当の娘のように育ててくれている。
だから、感謝しかない。
見晴らしの良い霊園の入口から、そう遠くない位置に母の眠る墓があり、雪はあまり深くなかったため入ることができた。
けれど墓石の前には先客がいて、その手前で私達は立ち止まる。
どこかで見覚えのある──誰かによく似た男性が花を手向けていた。
40歳になる父と同じか、少し下くらいの年齢だろうか。
ライダースジャケットを着て、赤みの強い茶色の髪をしている。