Snow Doll ~離れていても君を~


空を見上げると雲一つない快晴。

雪の予報はなく、青い空と雪道の白さの対比が美しいと思える日だった。


外出をするという兄に手を引かれ、玄関を出たとき。


「これ、渡しておくよ」


黒いスティック状の合鍵を手渡され、なくさないようコートのポケットにしまう。


兄は行き先を告げていない。でも、たぶんこれから桜花に向かうのだと思った。

あの電話では、今日が襲撃の日を指していた。



「薫兄さん。私と最後に賭けをして欲しいの」


突然切り出した私を、兄が意外そうに振り返る。


「……いいよ。何を賭けるの?」

「次の勝負で桜花が勝てば、私はまた桜花に戻る。蒼生が勝てば、私は薫兄さんのものになる」


自分で言っていて不安になりかける。
けれど、どうしても桜花に帰りたい気持ちが私の中にあった。
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