Snow Doll ~離れていても君を~
車の後部座席。影島とその部下と思われる蒼生高の制服を着た男の子に挟まれ、逃げ場所はない。
スマホは兄に預けたままなので、誰かに連絡しようにも無理だった。
「思ったより簡単にいったな」
「はい。あとは椿高や伯王高が到着するのを待ち、桜花に攻め込むだけです」
「佐々木海里と相原薫……。大事な女を傷つけたら、奴らはどれだけ苦しむだろうな?」
逃げられないようにするためか、影島は私の髪を一房、痛いほどに掴んできた。
影島は桜花に攻め込むと兄に伝えたが、それは見せかけで実は相原薫を潰すために画策していた。
そして椿や伯王にも手を借りて、桜花を潰そうとしているらしい。
「結局、自分自身や仲間が一番大切だろうから、お前を助けになんて来ないかもな」
冷たく嗤われたことを悔しく思うものの、私はしっかりと前を向き無言を貫いた。
影島は人質をとったつもりでいるかもしれないけれど。桜花の皆は私のことはもう、必要のない存在になっているから、あまり意味のないことだ。
「桜花も、相原の仲間も、一人残さず潰してやる」
影島は私の耳元に顔を寄せ、憎らしげな声で囁いた。