Snow Doll ~離れていても君を~

車の後部座席。影島とその部下と思われる蒼生高の制服を着た男の子に挟まれ、逃げ場所はない。

スマホは兄に預けたままなので、誰かに連絡しようにも無理だった。


「思ったより簡単にいったな」

「はい。あとは椿高や伯王高が到着するのを待ち、桜花に攻め込むだけです」

「佐々木海里と相原薫……。大事な女を傷つけたら、奴らはどれだけ苦しむだろうな?」


逃げられないようにするためか、影島は私の髪を一房、痛いほどに掴んできた。


影島は桜花に攻め込むと兄に伝えたが、それは見せかけで実は相原薫を潰すために画策していた。

そして椿や伯王にも手を借りて、桜花を潰そうとしているらしい。


「結局、自分自身や仲間が一番大切だろうから、お前を助けになんて来ないかもな」


冷たく嗤われたことを悔しく思うものの、私はしっかりと前を向き無言を貫いた。


影島は人質をとったつもりでいるかもしれないけれど。桜花の皆は私のことはもう、必要のない存在になっているから、あまり意味のないことだ。


「桜花も、相原の仲間も、一人残さず潰してやる」


影島は私の耳元に顔を寄せ、憎らしげな声で囁いた。
< 231 / 268 >

この作品をシェア

pagetop