Snow Doll ~離れていても君を~
「脱走は無理なので、大人しくしていてくださいね。廊下や旧校舎の出入口にも仲間を十人ずつ配置させてますから」
先ほど車で隣に座っていた、私より年下と思われる男子生徒が、ドアの前に立ち塞がり忠告する。
一筋だけ灰色のメッシュが入った髪が印象的だ。
左腕には制服の上からバンダナのような黒い布を巻きつけていて、何かの目印のように思えた。
私は部屋の角の椅子に座らされ、その黒い布と同じもので手首をきつく縛られていた。
「影島さんに、姫を好きにして良いと言われていますが、どうしましょうね……」
男が無表情にそう言い、ゆっくりと近づいてくる。
人形のように感情の浮かんでいない虚ろな瞳だった。
「髪を一房ずつ切り落としていきますか?」
私の肩に流れる髪を掴み、首をかしげる。
「それとも、爪を──」
彼が何かを言いかけたとき。
ドアの向こうで男達の唸り声と壁に何かが激突がするような音が聞こえ、身を固くする。