Snow Doll ~離れていても君を~
私はコートのポケットに入った鍵を思い出す。
嘘、これにGPSが?
……さすが過保護全開の薫兄さん、抜かりはない。
でも今回、その過保護のお陰で助けられたのだから文句は言えなかった。
「優希奈さんのお兄さんは出入口付近で影島達を食い止めてくれてるんだ」
敵に鋭い蹴りを入れながら春馬君が教えてくれる。
「影島は美原の奴らも呼んでるらしいし、どんどん敵の数が増えてるから、早く加勢しないとヤバイかも」
4階の敵は春馬君と椎名君に任せることになり、海里が先導し、ケイが私の手を引いて西階段を下りて行く。
「手紙、ありがとう」
ケイが急にお礼を言ってくる。
「海里ってば、ユキはお兄さんといた方が安全だし幸せになれるんじゃないかって、ウジウジ悩んでて。そんなとき、ユキからラブレターが届いて、それを読んで決心したみたい」
ラブレターと言われて頬に熱が集まる。
海里への、そして桜花のみんなへの想いを書き記したあの手紙は。
兄の目を盗んで、元々持っていた切手を貼り、近くにあったポストに投函してきたのだった。