Snow Doll ~離れていても君を~
「今日はちょうど人数集めて、逆に蒼生高に出向こうとしていた所だったの。ユキを取り返すためにね」
私の下りている西側の階段下。
そこには、大柄な体格の男に一方的に蹴りを入れられ、壁に背をつけ座り込んだ理希の姿があった。
いつもの明るさはなく、どこか虚ろな目をしている。
「理希……」
呼びかけると視線を上げた彼と目が合い、向こうからスッとそらしてきた。
自分の父親から全てを聞かされたという証拠だった。
同じクラスに、腹違いの姉がいたなんて複雑だろうと思う。
友達になりかけていた所だったから余計に──。
それでも、私は……。
「待ってケイ、理希を助けなきゃ」
「それはできない、ユキを逃がすのが最優先だから。海里の命令なの」
ケイは首を振り、私の手首をさらに強く握りしめる。
「私は仲間を犠牲にしてまで助かりたくない。お願い、大事な人をもう、誰も失いたくないの」
その言葉に一瞬手の力が緩んだ。
私はケイの手を振り切り、理希の元へと階段を駆け下りた。