Snow Doll ~離れていても君を~
一階にたどり着いたとき、遥か向こうの出口を見渡した状況は圧倒的不利に見えた。
薫兄さん達は東側の玄関付近で敵を食い止めていたが、新たに増えていく敵が多すぎて、見るからに苦しい状況。
海里は自分の親友が絶体絶命の状態だというのに素通りし、先で待ち構えていた男達と乱闘を始めてしまった。
「弱すぎだなー、コイツ。ほんとに桜花の兵隊なのか?」
その声にハッとして理希のそばへ走る。
理希の顔めがけて敵の拳が振り上げられ、私は咄嗟に理希に覆い被さるようにして盾になっていた。
「ゆ……優希奈ちゃん……?」
戸惑いの声を理希が発する。
彼の服から漂う血の匂いが鼻をついたが、気にせず抱きしめる。
これ以上、彼を傷をつけられないように。
「邪魔だ、女。退け」
「退かない。──私の弟だから」
「は? 弟?」
拳は目の前スレスレの所で止まったけれど、代わりに私の髪を引きむしるように上から掴み、すごい力で引っ張られた。
そのまま私の頭を壁へ激突させようとしてきたので、ぎゅっと目を瞑る。
「ユキ……!」
ケイの声がかかり、ほぼ同時に、壁にぶつかる衝撃が私を襲う。