Snow Doll ~離れていても君を~
「危ない、」

小さく呟く声と同時に、私の手は海里の大きな手で強く握りしめられていた。


「……あ」

食器の陰に包丁が隠れていて、私は危うく指を切るところだったらしい。


「気をつけろよ」

「ご、ごめん」


濡れた冷たい手が、そっと離れてゆく。

こんな些細なことで心を掴まれてしまいそうになる私。

たぶん、他の人より一緒にいる時間が長いから、意識してるだけ……だよね。


海里が私に優しくするのは、如月先輩の女だから。
それ以外の意味なんてない。


好きになるはず、ないんだから……。



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