Snow Doll ~離れていても君を~



「今夜は冷えるから厚着して行けよ」

学校からの帰り道、前を歩いていた海里が私に声を掛けてきた。


「そうだよ。女の子は特に体冷やしちゃいけないからね」

車道側を歩く春馬君も気を遣ってくれるような発言をする。


「厚着……、そういえば私、家からトレンチコートしか持ってきてないんだった」

「え? それじゃあ寒いよ。今から買ってくる?」

「でも、そんなお金ないし」

「如月さんから貰ったのがあるだろ」


海里が振り返り、口を挟む。


「あれを使うのは申し訳ないよ」


ウールのコートなんて、安くても1万円近くしそうだ。服のためにそんな大切なお金を使えるはずがない。


「じゃあ、優希奈さんの家に取りに行くしかないね。家にはコートあるんでしょ」


春馬君が事も無げに言った。


「家、に……?」

「やっぱり、帰りたくない?」

「……誰もいなければ、取りに帰れるかも」


あの人にさえ、見つからなければ──。


「なら決まりだね。俺達もついて行くから、道を教えて?」
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