Snow Doll ~離れていても君を~
私を視線だけで捕らえた彼は、一瞬唇の端を歪めて笑った。
そんなはずはないのに、食べられてしまいそうな気がして、ゾクリとする私。
「優希奈さん、行こう」
春馬君に促され、彼を視界から消す。
「あの人は3年の山吹さんだよ。山吹派のリーダー」
赤い鳥居をくぐりながら春馬君が教えてくれた。
「あの人が……」
振り返ってよく見てみると、この前の帰り道にすれ違った金髪と長髪の二人組が、山吹という人の両脇を固めていた。
「危ないから掴まって」
差し出された春馬君の冷たい手に引かれ、木でできた長い階段を上っていく。
左右には高い樹が立ち並び、もし今が春だったら夜桜が綺麗だろうなと想像する。
頂上に着くと、木製のベンチがいくつかあり、奥には古い神社があった。
ベンチへ私を座らせた春馬君は、階段の方へ顔を向けたあと、私の隣に腰を下ろした。
「あれ? 春馬君は行かないの?」
てっきり下へ戻るのかと思ったら、違うみたいだ。