Snow Doll ~離れていても君を~
「それは、海里と俺が優希奈さんの警護を任されているからですよ。龍臣は彼女のことを大切にし過ぎてるから、そう見えるだけです」
淡々と春馬君は説明する。
如月先輩の彼女だという自覚はない私。
学校以外で会うことはおろか、登下校も一緒に帰ったことはないし、二人きりでデートをしたことすら一度もない。
忙しいせいなのか、それとも。
ただ“彼女”という飾りが欲しいだけなのか……。
そばにいる時間が長い海里の方が、よっぽど普通の“彼氏”っぽく思える。
樹莉さんと俊也さんは、少し離れたベンチへ座った。
「ねぇ、春馬君」
私は隣に座る彼に、小声で話しかけた。
「樹莉さんって、もしかして山吹さんの?」
「そうだよ。山吹さんの女」
「そうなんだ。美男美女って感じでお似合いだね」
それに比べて私は……。
「優希奈さんは何も気にすることないよ。今日のゲームに勝てば、少しは龍臣との関係も変わってくると思うから」
春馬君は私の密かな溜め息に気づいたのか、優しく微笑んでくれた。