Snow Doll ~離れていても君を~
「──始まったみたいだな」


俊也さんがつぶやき、辺りに緊張が走る。
遠くから、唸り声のようなものが聞こえてきた。


「どうなったら勝ちなの?」


疑問に思った私は春馬君の横顔を見上げた。


「制限時間内ににここへ辿り着けばいいんだよ。ゴールできた人数の多いチームが勝ちなんだ」


春馬君はシルバーリングをはめた指を鳴らしながら答えた。

あれ……? さっきと何か、雰囲気が違う?


いつもの可愛い小悪魔のような笑顔が消えていて。
代わりに、瞳の奥に鋭さが見え隠れしている。


「でも俺。このゲーム、負けてもいいかなって思ってる」

「──え。どうして?」

「この勝負にもし勝ったら……、優希奈さんがどんどん遠い存在になっていく気がするから」

「私が、遠い存在に?」

「ごめん、そんな気がするだけ。気にしないで」


春馬君は赤い艶のある唇をきゅっと上げて、笑顔を作った。


気にしないでと言われても……

私が口を開こうとしたとき、春馬君のスマホが鳴った。


「海里君からだ」

良くない連絡なのか、電話に出た彼の顔から笑顔が消える。
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