Snow Doll ~離れていても君を~
「──わかったよ」


彼はそれだけ言って、スマホをジャケットに仕舞い、ベンチから立ち上がった。


「悪いけどちょっと参戦してくるね。優希奈さんはここにいて」

「……うん」


春馬君が隣からいなくなるなんて、かなり心細い。


「──切り札を使わないといけないって、相当ヤバイ状況なんだな」


不敵に笑った俊也さんも、春馬君の後を追って階段を降りて行く。


切り札……?


どんな状況なのかをこっそり見に行こうと、私が歩き出したとき。


「待って」

冷たい風に髪をなびかせた樹莉さんが、私の行く手を阻んだ。


「聞きたいことがあるんだけど。そこ座ってくれる?」


樹莉さんはまた私にベンチへ座るように促し、自分も私の隣に座った。

甘いローズの香水の匂いがふわりと降りかかる。


「ねぇ、龍臣とはいつから付き合ってるの?」

「──えっ?」


樹莉さんは大きくカールさせた睫毛をゆっくり瞬かせ、私を観察している。


「えっと……。つい、最近ですけど」

「ふぅん、彼って貴女みたいなのが好みなんだ。貴女は龍臣のどこが好きなの?」

「どこって──」


私はまたもや言葉に詰まって視線を落としてしまう。
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