Snow Doll ~離れていても君を~
「礼央が……? 透夜(とうや)は?」

「山吹さんは……、」


二人の会話を聞きながら、私はその向こうに春馬君が階段を上ってくるのを見つけた。


「春馬君!」


急いで走り寄ると、彼の口元に血がにじんでいることに気づき、眉をひそめた。


「大丈夫……?」


私は恐る恐る声をかける。

春馬君はいつもと違って近寄りがたい雰囲気を出していた。


「──あと、5分しかない」

険しい眼つきで地面を睨み、切れた唇の端を拭う。


「海里達は無事なの……?」

私は風に煽られた髪を押さえ、階段の方へ近づいた。


「優希奈さん!」

春馬君の制止の声も聞かずに、下を見下ろす。


「────」

私の目に映ったのは、映画で見るような凄絶な戦いだった。

まるで、狼同士が命を賭けて殺し合っているかのような──。


彼らの足元には、倒れている人達が何人もいた。
ここからじゃ遠くて、顔までは判別できないけれど。

もしそのうちの一人が、海里だったら……?
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