Snow Doll ~離れていても君を~
痛々しい光景に、思わず顔を背けてしまう。
「危ないから向こうに行って下さい」
その隙に春馬君に腕を引っ張られ、元のベンチの方へ連れて行かれる。
そっと後ろを振り返ったとき、
「透夜──」
「山吹さん!」
樹莉さんと俊也さんが同時に叫んだのが聞こえて。
階段の付近に影が一つ、現れていた。
この勝負が始まる前に見かけた、山吹という人──。
額の辺りから赤い物が流れ出し、顔の片面を汚していた。
春馬君が小さく舌打ちをして、腕時計を確認する。
もう、時間がない──。
私が祈るように階段の方を見つめたとき。
一見すると無傷の如月先輩が姿を現し、そのあとに……海里がゆっくりとこちらへ歩いてくるのが見えた。
唇の端を手の甲で拭ったあと口から唾を吐き出し、日陰で融けずに残っていた白い雪が、彼の赤い血で染まった。
「海里……」
私の唇から掠れた声が漏れる。
でも、漂うオーラが怖くて、私は彼に近づくことができなかった。
「危ないから向こうに行って下さい」
その隙に春馬君に腕を引っ張られ、元のベンチの方へ連れて行かれる。
そっと後ろを振り返ったとき、
「透夜──」
「山吹さん!」
樹莉さんと俊也さんが同時に叫んだのが聞こえて。
階段の付近に影が一つ、現れていた。
この勝負が始まる前に見かけた、山吹という人──。
額の辺りから赤い物が流れ出し、顔の片面を汚していた。
春馬君が小さく舌打ちをして、腕時計を確認する。
もう、時間がない──。
私が祈るように階段の方を見つめたとき。
一見すると無傷の如月先輩が姿を現し、そのあとに……海里がゆっくりとこちらへ歩いてくるのが見えた。
唇の端を手の甲で拭ったあと口から唾を吐き出し、日陰で融けずに残っていた白い雪が、彼の赤い血で染まった。
「海里……」
私の唇から掠れた声が漏れる。
でも、漂うオーラが怖くて、私は彼に近づくことができなかった。