Snow Doll ~離れていても君を~
「──時間、だな」
声音に悔しさをにじませて、俊也さんが勝負の終わりを告げた。
海里達が勝った……?
ホッとして肩の力が一気に抜ける。
海里のそばへ駆け寄ろうとしたとき、如月先輩と目が合った。
「──優希奈、来い」
低い声で呼ばれ、私は何か嫌な予感がしていた。
「山吹さんのチームは、龍臣の配下につく。そういうことでいいですね」
春馬君が事務的に確認し、山吹さんがゆっくりと頷く。
「俺は甘く見てたよ、お前らの戦力を」
山吹さんは悔しげに唇を歪めて笑い、小さなナイフで薬指を切った。
そして、真っ白な布に赤い雫を一滴、垂らす。
──それが、服従した証。
如月先輩へ、その布が手渡されると、彼は私の腕を掴んで周りを見回した。
「これからは、優希奈──俺の姫を、第一優先で守るように」
「──了解」
山吹さんや俊也さんが応え、私は一人うつむいた。
第一優先で、守る……。
私に、どんな価値があるっていうんだろう。