Snow Doll ~離れていても君を~
鳥居をくぐり出口に辿り着くと、1台の黒塗りの車が路肩に停まっていた。
如月先輩が後部座席のドアを開け、私を先に中に入れる。
「こんばんは。キミが龍臣の──」
新車の匂いとともに私を迎えたのは、運転席に座る男の人。
「……こんばんは」
軽く会釈をすると、如月先輩よりも大人っぽいその人が、わずかに目を細める。
「俺の兄貴だ」
如月先輩が隣でボソッと教えてくれた。
「健臣って言います。よろしくね」
「……優希奈です。よろしくお願いします」
言われてみれば、知的な目元とかが似てるかも。
髪が栗色に染められていて、喋り方も顔つきも如月先輩より優しそうな印象。
どこへ連れて行かれるのか分からないまま、車が静かに発進した。
「──あの。怪我は大丈夫ですか?」
沈黙を破りたくて、私は先輩に声を掛ける。
「このぐらい、いつものことだから気にしなくていい」
「……そうですか」
「今夜は一つ部屋を予約してあるから。そこでゆっくり休めば一晩で回復する」