Snow Doll ~離れていても君を~



「帰ってたのか。早いな」

合鍵で家に入ってすぐ、海里も後から帰ってきた。


「如月さんと一緒に泊まるんじゃなかったのか?」

怪訝そうに私を見ながらライダースジャケットを脱ぐ海里。


「そうだけど。なぜか帰してくれたの」

「まさか如月さんを怒らせたわけじゃないよな」

「そんなこと、してないよ。たぶん」


海里の顔はよく見ると擦り傷のようなものがたくさんあって、頬や唇に赤い血が滲んでいた。


「大変、消毒しなきゃ」

「洗い流しとけば大丈夫だって」


軽く返事をした彼は、洗面台へ向かう。


如月先輩に告げられた言葉を思い出し“好き”という言葉を一度意識してしまうと。

もう普通に、海里の目を見て話せなくなっていた。




顔を洗い終え、冷蔵庫を開けた海里はミネラルウォーターを一気飲みしていた。
ごくごくと喉に流し込むたびに、喉仏が動き妙な色気を感じる。


唇を手の甲で拭った彼は、ふと私を振り返った。
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