Snow Doll ~離れていても君を~
「あんたも飲む?」

じっと見ていたのを欲しいと勘違いしたのか、海里が飲みかけのペットボトルを差し出してくる。


私は慌てて首を横に振って、彼に背を向けた。

頬が熱を持っているのを感じながら。




なんだろう……、如月先輩といるときはこんなにもドキドキすることはないのに。

今の私は挙動不審なくらい、動揺している。

意味もなく、床に落ちた雑誌を拾い上げ、リビングの片づけを始めたりして。



「疲れたから先に寝るわ」

「……うん。おやすみなさい」


海里が自分の部屋へ入ってしまい、私はその隙にシャワーでも浴びることにした。





シャワーから注がれる熱いお湯が、冷え切っていた私の体を温める。



この家の居心地が意外と良くて。

忘れたい“あの記憶”を綺麗に流してくれそう。



バスルームから出て体を拭き、下着を身につけたあと。

部屋着用のワンピースを着ようと手に取ったとき──
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