Snow Doll ~離れていても君を~

「今日の帰り、家まで送るよ。また遭難されたら困るしな」


先輩はどうやら、私が遭難しかけたと思っているらしい。

厳密には、違うんだけど……。


「いえ、大丈夫です。一人で帰れますから」

「でも、心配だよ。ちゃんと家まで帰ったかどうか確かめないと、安心できない。送らせて?」


先輩がしつこく食い下がるので、私は心の中で溜め息をついた。


「私……家には帰れません」

「──え?」

「家を、追い出されたんです」

「……どうして?」

「…………」


理由までは言えなくて、私は無言でうつむいてしまう。


「そうしたら、今日はどこに泊まるの?」

「女友達の家とか……」

「──そうか。困ったことがあったら、すぐに言うんだよ」


如月先輩は意外にもあっさり頷き、私を残して保健室を後にした。



急に一人にされたせいで。

温まりかけた心がまた、冷えていく。


時計の秒針の音が妙に気になって、もう眠ることはできなかった。
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