Snow Doll ~離れていても君を~

「違う……。これは虐待とかじゃないの」

「は? どう見たって虐待だろ」

「これは事故なの」


私は肩の傷を隠すように手のひらで覆った。


「誰にやられた? 父親か、母親か」


事故だと言っているのに、海里は鋭い眼差しで詰め寄った。


「──母、に。熱湯を浴びて……。でも故意じゃない」


私は海里から目を逸らし、小声で答えた。


「故意じゃないなら何で家に帰らない? 怖がる何かがあるから帰らないんだろ?」

「それ、は……。わざとじゃないと判断されて事件にはなっていないの。母はちゃんと病院に連れていってくれたし。父は何も知らないと思う。きっと事故だと思ってる。
……だからこれは、虐待じゃない」

「世間からは気づかれていない、ってことか。
──厄介なモノ拾ったな」


私から背を向け、低く呟いた海里は深く息をつく。


「早く服着ろよ。続きはあとだ」
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