Snow Doll ~離れていても君を~
如月先輩からは『海里とは結ばれる可能性はない』と言われているし。
海里も全然、私にそんな気持ちがあるように見えない。
私のことを庇ってくれたのも、ただの気まぐれ。
冷たい性格に見えて実は優しい所もある、というだけなのだと思う。
「二人の邪魔をするのもあれなんで、俺は先に帰るね」
「邪魔だなんて」
私が引き止めるのも聞かず、春馬君はコーヒーカップをトレイに戻し、笑顔で手を振り教室を出て行ってしまう。
あとに残ったのは、海里と私だけ。
沈黙が訪れ、気まずくなった私はコーヒーカップを片づけることにする。
「これ、洗ってくるね」
確か隣の部屋に流しがあったはず。
これで二人きりの気まずい状況から脱出できるはず、そう思ったのに。
「俺も手伝う」
私からトレイを奪った海里が、流しの方へ先に行ってしまった。
慌てて後を追いかける私。
給湯室のようなその場所は、二畳分くらいのスペースしかなくかなり狭い。
必然的に、さっきよりも彼との距離が縮まることになる。