Snow Doll ~離れていても君を~
……が、重い物が入った段ボールにつまずき、勢いよく体が投げ出される。
「きゃっ」
短い悲鳴を上げながら、私は咄嗟に目の前にあった何かにしがみついた。
そしてそのまま、ゆっくりと床へ倒れ込む──
「…………」
転んだわりにあまり痛みがなく、頬に触れる布からは何やら良い香りがする。
柑橘系の爽やかな香りだ。
深い青の布──それは海里のシャツだった。
つまずいたときに掴んだのは海里の体で、私は海里を巻き込む形で倒れ込んでいたらしい。
仰向けに倒れた海里の上に、ちょうど私が乗っかっている状態だ。
私の膝が制服越しとはいえ海里の太腿辺りに触れている。
「あんた…………いい加減にしろよ」
低く押し殺した声が下から聞こえてきて、思わず身震いする。
上半身を起こした海里は私を膝の上から退かし、睨みつけてきた。
よく見ると、長めに伸ばした髪の隙間から赤く染まった耳が覗いていた。