Snow Doll ~離れていても君を~

「あのさ、如月さんの彼女だって自覚あんの?
その、上目遣いで涙目ってやつ、やめろ」

「あ……。ごめん、なさい」


意味もわからず怒られ、私は目を伏せる。


「他の男に同じことしてたら、とっくに襲われてるぞ」


その言葉に青ざめて後退りする私。


「えっと……、それなら海里は、どうして私を襲わないの?」


私の言葉が意外だったのか、海里が鋭い目を丸くする。


「──は? そんなの我慢してるからに決まって──…じゃなくてー、」


早口で何かを言いかけた海里は、一旦頭を整理するためか口を閉ざした。


「……如月さんの大事にしてるモノに、手を出すわけがないからだろ」


床に手をつき立ち上がった海里は、座ったままの私に無意識なのか片手を差し出した。

その手をそっと取り、立ち上がる私。

滑らかな海里の手は、細長い指ながらも、がっしりとしていて温かかった。



「なあ。如月さんのことは、どう思ってる?」

「どう、って」

「正式に付き合うことになったんだろ。うまくやっていけそうか?」
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