Snow Doll ~離れていても君を~


夕食作りは私とケイが担当することになった。


ケイは料理が趣味らしく、鍋つゆを作ったり手早く野菜を切ったりしていく。

その手際のよさは私がキッチンにいたら邪魔になるほど。

結局、私の仕事は鍋にタラやすり身を入れるだけとなってしまった。




リビングのローテーブルに5人が集まり、烏龍茶とノンアルコールビールで乾杯する。


私の両隣がケイと春馬君。向かいが如月先輩と海里だった。

ケイが如月先輩のために甲斐甲斐しく鍋の具をよそっている。


その隙に如月先輩が報道番組のチャンネルを入れ、それを横目で見ていたら、スタイルの良いイケメンキャスターが出てきて目が釘づけになった。


「ケイ。あの人、格好良いと思わない?」


そう言った途端、ケイ以外の三人から一斉に睨まれた気がした。視線が妙に冷たい。


「本当だ。私の好みじゃないけど素敵ね」

「俳優になれそうなくらいだよね」


TVの中の彼はこちらへ爽やかな笑顔を向けてくるので、海里も同じように笑ってみたら良いのにと思う。


笑った所なんて、一度でも見たことがあっただろうか。
あったとしても、口角がほんの数ミリ上がっていた程度に違いない。
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