Snow Doll ~離れていても君を~
「今日は泊まる家がないんだよな?」
頬杖をついてソファに座る男が、低い声で私に話しかけてきた。
「え? なんでそれを知って……」
口を半開きにして聞くと、彼はフッと笑いをもらした。
その笑顔が誰かにそっくりで──
私は今、頭に思い浮かんだ人と、目の前の男を比べてみた。
「嘘……」
「ん? どうかしたか?」
声も似てる……。
「まさか、先輩……?」
ううん、きっと双子の兄弟か何かなんだ。
名前だって違うし、眼鏡もしていない。
目の前の人が、黒縁眼鏡で真面目で、優しいあの先輩なわけがない。
けれど──私の願いはあっさり打ち破られる。
「そういえば、明日は風紀委員会があるんだったな」
ふと思い出したように、彼は言った。
「…………。やっぱり、如月先輩なんですね」
彼は私の質問には答えず、妖しく微笑んだ。
あの優しくて真面目な先輩が、裏ではこんな人だったなんて。
一体、これは何の集まりなんだろう。
健全な『映画鑑賞同好会』とは、とても思えない。
「今から出す条件をのんでくれれば、宿泊場所を提供するが、どうする?」
「条件……?」
何だか嫌な予感がする。