Snow Doll ~離れていても君を~
髪を手早く乾かしていくうちに、不意に海里の指が私の首の後ろを撫でた。


私の口から思わず「んっ……」とおかしな声が出てしまう。

一瞬目を見開いた海里は鏡越しに私を睨んできた。


「変な声出すなよ、あいつらに誤解されるだろ」

「……すみません」


私は真っ赤になって下を向く。

ドライヤーの音でかき消されることを期待したけど、近すぎて聞こえてしまったみたい。

沈黙に耐えきれなくなった私は、鏡の中の海里に話しかけた。


「あの。海里って、誰か好きな子いる?」


困惑の表情を浮かべ、海里はしばらく動きを止めた。

やっぱり質問、間違えたかな……。


「この状況で、よくそんなこと聞けるな」


私の髪に触れていた指を肩に滑らせ、海里は私を自分の方へ引き寄せる。

後ろから抱きしめられていると勘違いしそうな距離に、心拍数が上がっていく。
< 92 / 268 >

この作品をシェア

pagetop