Snow Doll ~離れていても君を~
鏡越しに海里が私を見つめる。

吸い込まれてしまいそうな澄んだ瞳。
一見冷たいけれど、その奥は凛とした強さと温かみがあった。

薄めの唇が、そっと私の髪に近づく。


「全然気づいてないんだな。俺が最初からあんたを──」


いつもより低い声が何かを言いかけたそのとき、突然脱衣所のドアが開いた。


「あら、ごめんなさい。取り込み中だったのね」


振り返ると、わずかに目を丸くしたケイがドアを半分開けた状態で立っていた。


「いや、違うんだ慶蔵」

「出直してくるわ」

「だから誤解なんだって、慶蔵!」

「ケイゾウケイゾウ言わないでって、いつも言ってるでしょ」


なぜか春馬君のときとは違い、ケイは無理矢理ドアを閉め、遠慮するかのように私達をまた二人きりに戻す。

春馬君が私の髪を触ろうとしたときは阻止してきたのに。



海里は動揺しつつもドライヤーを引き出しにしまっていたので、私は先に廊下へ出る。


「ちょっと、ケイ、誤解だからっ」


慌ててケイの後ろ姿を追いかけた。
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