君は友達。
そうこうしているうちに授業が終わり、またしばしの自由時間。
早く終わればいいのにな、そう思い次の授業の用意をしていると。
「死ねばいいのに」
私の方を指さして、ヒソヒソ話をする声がする。
「本当に、要らない」
「死んじゃえ」
死んだって何も変わらないくせに、幼稚な考えだし、要らないのはそんな考えだ。
何も言わずに聞こえない気づかない振りをした。
「雅」
呼ばれた。
私の名前が。
「侑奈ちゃん、なに?」
また侑奈ちゃん。
本当に嫌な予感しかしない。
「ユリ、廊下で見張ってて」
取り巻きの一人を廊下に立たせて、先生が来た瞬間にいじめをやめるという算段だ。
ユリ、と呼ばれた人が静かに走ってく。
「雅って本当にうざい」
面と向かって発された悪口。
ちくんと胸が痛む。
傷つく?
まさか、こんなことで?
ーー明日には靄がかかっているくせして。
「いじめだした理由教えてあげようか」
ダンッと私の机を侑奈ちゃんの手が叩きつけられる。
その衝撃音に思わず反射的に肩を揺らすと勝ち誇ったような笑みを浮かべる侑奈ちゃん。
「教えてほしい?」
ゆっくりと上がっていた口角がさっきよりも上がって気味が悪い。
「...聞いてんだろうがッ!」
ガタンッ!
盛大な音を立てた。
机が倒された。
ばさばさと教科書がしまわれていたのに地面に落ちてくる。
「ねえ、教えて欲しい?」
ああ...これは教えてと言わなきゃいけないのか。
別に、いいのに。
「...教えて」
むくむくと膨れる対抗心が〝逆らってはいけない〟を太陽を遮る雲のように隠してしまう。
ムスッとした声。
だめだ。怒らせてしまう。
「えー?それが物事を人に頼む態度?」
いつもの教師の前の猫なで声。
甘ったるい声は私の胃の中をかき乱す。
「.....早く言えよ」
猫なで声から低い声になった。
声の変化が半端じゃない。
「教えて、ください」
惨めだ。
ぐっとスカートを握った。
いけない。シワがついてしまう。
でもそうでもしていないと胃の中で暴れだしそうな憎悪が押さえつけられなくなってしまう。
「...まあ、いいわ。教えてあげる」
シィンと。
静まり返った。
静寂が訪れた。
少し騒がしかったはずなのに。
「いじめられる理由はね?」
もったいぶるように焦らしをする侑奈ちゃんに視線は注がれる。
それが高揚感だと言わんばかりに幸せそうな顔をする。
「うざいからよ」
馬鹿か、と相手が侑奈ちゃん出ないのなら口に出ていただろう。
小学生のようで幼稚な理由。
でも仮に理解しようと思うと反吐が出る。
「それだけ、なの...?」
止まらないイライラに身を任せてはダメなのに。
「なに、文句あんの?クズ」
なじられるのはまったくもって気分が良くない。
「あんたは悪者でしょ?」
悪者ってなに。
犯罪者のこと?
自分以外の意見のこと?
汚い人間のこと?
どんな基準だよ。
「ゆーな!せんせ来た!」
にっこりと侑奈ちゃんが笑った。
私も唇のはしにぎこちのない笑いを貼り付けておいた。
「ええ〜?もぉ、お終い?じゃあね。クズ」
そう言って席に帰る侑奈ちゃんを横目で見て、机を直す。
みんなの注がれる視線が痛かった。
冷たい、そんな視線。
なんだこの既視感は。
味わいたくもない既視感。
飛び出したかった。
感情は胃から喉を伝って、言葉になりそうだった。
口で負かしてやりたかった。でも酷くなるのは嫌だから飲み込む。
消化できない感情は、いつしか悲しみに変わって、ひょっとしたらどんどんどんどん、日を追う事に大きくなって何倍も重たくなっていく。
そして抱えきれなくなる。
そんな負の無限ループだったんだ。
早く終わればいいのにな、そう思い次の授業の用意をしていると。
「死ねばいいのに」
私の方を指さして、ヒソヒソ話をする声がする。
「本当に、要らない」
「死んじゃえ」
死んだって何も変わらないくせに、幼稚な考えだし、要らないのはそんな考えだ。
何も言わずに聞こえない気づかない振りをした。
「雅」
呼ばれた。
私の名前が。
「侑奈ちゃん、なに?」
また侑奈ちゃん。
本当に嫌な予感しかしない。
「ユリ、廊下で見張ってて」
取り巻きの一人を廊下に立たせて、先生が来た瞬間にいじめをやめるという算段だ。
ユリ、と呼ばれた人が静かに走ってく。
「雅って本当にうざい」
面と向かって発された悪口。
ちくんと胸が痛む。
傷つく?
まさか、こんなことで?
ーー明日には靄がかかっているくせして。
「いじめだした理由教えてあげようか」
ダンッと私の机を侑奈ちゃんの手が叩きつけられる。
その衝撃音に思わず反射的に肩を揺らすと勝ち誇ったような笑みを浮かべる侑奈ちゃん。
「教えてほしい?」
ゆっくりと上がっていた口角がさっきよりも上がって気味が悪い。
「...聞いてんだろうがッ!」
ガタンッ!
盛大な音を立てた。
机が倒された。
ばさばさと教科書がしまわれていたのに地面に落ちてくる。
「ねえ、教えて欲しい?」
ああ...これは教えてと言わなきゃいけないのか。
別に、いいのに。
「...教えて」
むくむくと膨れる対抗心が〝逆らってはいけない〟を太陽を遮る雲のように隠してしまう。
ムスッとした声。
だめだ。怒らせてしまう。
「えー?それが物事を人に頼む態度?」
いつもの教師の前の猫なで声。
甘ったるい声は私の胃の中をかき乱す。
「.....早く言えよ」
猫なで声から低い声になった。
声の変化が半端じゃない。
「教えて、ください」
惨めだ。
ぐっとスカートを握った。
いけない。シワがついてしまう。
でもそうでもしていないと胃の中で暴れだしそうな憎悪が押さえつけられなくなってしまう。
「...まあ、いいわ。教えてあげる」
シィンと。
静まり返った。
静寂が訪れた。
少し騒がしかったはずなのに。
「いじめられる理由はね?」
もったいぶるように焦らしをする侑奈ちゃんに視線は注がれる。
それが高揚感だと言わんばかりに幸せそうな顔をする。
「うざいからよ」
馬鹿か、と相手が侑奈ちゃん出ないのなら口に出ていただろう。
小学生のようで幼稚な理由。
でも仮に理解しようと思うと反吐が出る。
「それだけ、なの...?」
止まらないイライラに身を任せてはダメなのに。
「なに、文句あんの?クズ」
なじられるのはまったくもって気分が良くない。
「あんたは悪者でしょ?」
悪者ってなに。
犯罪者のこと?
自分以外の意見のこと?
汚い人間のこと?
どんな基準だよ。
「ゆーな!せんせ来た!」
にっこりと侑奈ちゃんが笑った。
私も唇のはしにぎこちのない笑いを貼り付けておいた。
「ええ〜?もぉ、お終い?じゃあね。クズ」
そう言って席に帰る侑奈ちゃんを横目で見て、机を直す。
みんなの注がれる視線が痛かった。
冷たい、そんな視線。
なんだこの既視感は。
味わいたくもない既視感。
飛び出したかった。
感情は胃から喉を伝って、言葉になりそうだった。
口で負かしてやりたかった。でも酷くなるのは嫌だから飲み込む。
消化できない感情は、いつしか悲しみに変わって、ひょっとしたらどんどんどんどん、日を追う事に大きくなって何倍も重たくなっていく。
そして抱えきれなくなる。
そんな負の無限ループだったんだ。