怨返し─赦されない私の罪─
「あぁ〜ありがとう。金は後で渡すからそれでいいだろ?」
「お前が小説読むなんていつぶりだ?...昔のお前は静かなやつだったな。俺が外へ遊びに誘っても家にいたがってた。んで、困ったり悲しかったり、悩みがある時は本に逃げてたよな。」
「はぁ....てめぇ、それいつの話だよ。今はそんなんじゃねぇよ。」
「あぁ、あの事件をきっかけにお前は本に触れることは無かったな。」
京吾のページをめくる手がピタリと止まった。さっきまで入っていた内容が一気に頭から消し去り、記憶の奥にしまっていたある思い出が浮かび上がってきた。
「だけど、来希と清都に出会ってまた変わった。俺には出来なかったことをやってくれたあの二人には感謝してる。
だから今回の件、お前の身は第一だがアイツらの事も俺は心配してる。」
「はっ...昨日殴り飛ばしたやつが吐くセリフじゃねぇな。」
「なぁ、京吾。お前だって心配なんだろ?今まで封印してきた本を読もうとしてんだ。あの二人は」
「黙れよ竜。」
京吾は竜の言葉を遮って睨み付けた。百戦錬磨の竜でも、京吾の目の鋭さには顔を強ばらせた。
「....わかんねぇんだよ俺だって。うん、分からねぇ...だが、決まってんだよ。俺がアイツらを見限ろうと考えた時点で、俺の心どうこうより行き先はもう決定してんだ。」